2017年夏アニメ 感想戦

 毎クール予習ばっかして投げっぱなしだったのですが、今期からは感想も書いて一応の回収をしようと思います。

 だらだら書いてもいいのですが読みやすさ(と書きやすさ)を考慮してFani通さんの形式を倣って以下の5点について書いていきます。

 ストーリー:話について

 キャラ:キャラクターの魅力について

 ビジュアル:作画とか撮影とかわかる範囲で

 音楽:OPとかEDとか劇伴について

 面白:とりあえず面白要素。見ている時の楽しさについて

 各要素、厳密な区分がないため重複のでている部分もありますが、概ね分けられています。OP・ED単体の評価については別途記事をたてるつもりです。

 感想は全作品だととても無理なので見た中でも書きたくなったものに限ってます。 

 ちなみに個人的今期ベストアニメ、優勝アニメは「アクションヒロインチアフルーツ」です。プリプリ旋風を最終回で打ち破っての優勝でした。

 

アクションヒロインチアフルーツ

ストーリー:95

 オリジナル勢では今期最強。ストーリー面で後半、特に最終回で怒涛の追い上げをし、優勝候補であったプリプリを差し切って金星を挙げた。個別回の破壊力ではプリプリに常に一歩リードされていたのを、全話の積み重ねでぶん殴りをかけてくる最終話で吹き飛ばす。それほどに最終話が良い作品。

 「妹のためにした手製のヒーローショーが本物のヒーローショーの始まりとなる」という導入から始まり、仲間が集まり、結束して成長していく。チアフルーツというチームがアクションヒロイングループとして成長する物語として見てもまず完成度が高く芯がしっかりしている。

 しかし、そこに加えて最終話に向けて「みさきが不運と向き合う」という内省的な物語を同時に進行させ、二つの要素を劇中劇の形で統合してカタルシスに落とし込んだ手際は完璧といってよい。数ある劇中劇要素を含んだアニメの中でも分かりやすさ、感動度、リンクの具合、どれを取っても一流であった。

 最終話だけでも今季優勝を果たせるのだが、個別回も粒ぞろい。各キャラの掘り下げがまんべんなくされており、ベテランの手腕が垣間見える。

キャラ:95

 カップリング妄想がはかどるキャラが目白押し。ベタなキャラ付けに「鉄道好き」や「土建屋の娘」といった設定を足すことで差別化をしつつ話の展開を生む材料としており、熟練の腕が垣間見える。

 どのキャラも可愛いが、特に杏ちゃんが最高。伊藤美来のもつ天真爛漫さと特撮愛がそのまま具現化したようなキャラクターであり、はまり役といってよい。

ビジュアル:85

 ディオメディアアニメということで本気の戦闘シーンはとっておきもとっておきという扱いだが、肩すかしにならないくらいには良い動きをしていた。キャラの絵が崩れなければいい、という守るべきラインを心得ている感じがあり、無理しないで止め絵で処理しているところも多い。でも可愛いしOK。

 背景等、力を抜くところは抜きつつ、表情の芝居などはしっかり押さえておりTVアニメとしては理想的な絵作りになっていたと思う。

音楽:80

 OP、ED。どちらも良曲。アイドルユニットソングらしいキャッチーさがある。

面白:100

 とにかく最終話が素晴らしい。

 劇中劇という演出は様々なアニメで使われてきたものだが、アニメ内の現実を描くだけでも描写は不足しがちなのに劇中の設定まで混ぜてそのリンクを描くというのは並大抵のことではなく、実際に成功している例はほとんどない。しかし、チアフルーツの演出は非常に分かりやすくかつ劇的なものになっている。

 会長個人の「呪い」に打ち勝つという話をアドリブによる劇中劇と物語内現実のリンクという形で表現しつつ、今までの成長過程をワンシーンで表現する。これができるのは、常にお話の中にヒーローショーという要素が貫徹されてきたからであり、このアニメでしかできない表現といえる。構成の荒川を中心に脚本の多くが特撮にも関係している人だったからこそできたアニメだと思う。

 最終話の素晴らしさだけでも満点だが、そこまでを繋ぐ個別回もひとつひとつ完成度が高い。毎回キャラの掘り下げをするだけでなく「ヒーロー“もの”とはどうあるべきか」という命題に全体を通して向き合っており、それらの積み重ねが最終回の興奮につながる。この全体を通して観たときの気持ちよさまで計算された構成は荒川氏の手腕が光るところである。

 また、こうした真面目な面を持ちながらも常に笑いを忘れていないところもポイント。掘り下げも兼ねたキャラコントを基調としつつも、隙あらばパロディネタをかましてくる。特に過去の特撮をオマージュした台詞の数々は「分かるやつだけ楽しい」というヲタクにはたまらないものになっている。こらのパロディ台詞はただのコメディ要素としてだけでなく、要所要所でキャラクターへの激励などとして使われている。これにより過去のヒーロー作品への愛とリスペクトを示し、この作品もまたそれらと同じ熱い意思が根底にあることを表す。大変上手い手法だと思う。

 

プリンセス・プリンシパル

ストーリー:90

 1話から11話まで、単話完結形式としては毎回が完璧と言っていい話作りになっていた。ストーリーの練りこみ、キャラの練りこみが非常に良くできており、毎回の余韻は凄まじいものに。その分m最終話でチアフルーツに競り負けてしまった感があるのが非常に惜しいところ。

 話としてはきれいに収まったと思うが、2期を露骨に匂わせてくるかーという残念感は否めない。

キャラ:95

 黒星紅白とかいうキャラデザの神様。かわいいとかっこいいが同時に成立する感じが素晴らしい。

 アンジェやプリンセスといった二面性のあるキャラはもちろんのこと、一人だけ強さが異次元のちせや一番トリッキーな声帯設定を持つベアトとこちらの想像を掻き立てるキャラが多い。そしてドロシーが最高。大地葉最高。

ビジュアル:95

 CGと作画を組み合わせることで常にハイクオリティな画面を維持しているのがまず凄いところ。しかしプリプリの真髄はそこに加えて「撮影」の妙がある。

 車が出てくるシーンなどは特に顕著だが、映画、特に洋画を思わせるようなカメラワークが随所で見られる。例えば10話のラストの方、雪の降る町の中を走っていくシーンで画面の奥に吸い込まれていく車を映しつつカメラがせり上がるところなど、おもわず感嘆するカメラ使いだと思う。

 このほかにも全般的に絵のクオリティ以上に映画っぽさを感じさせるところがあり、スパイものというジャンルへのリスペクトがあるように思う。

音楽:95

 美少女が拳銃持ったらかかるのは梶浦音楽一択。これはもう10年以上ヲタクにかけられた呪いのような刷り込みである。アンジェがCボールを使うときのBGMなど、耳に残りつつシーンを壊さない音楽づくりは流石の仕事。

 OP・EDはどちらも名曲だが、とにかくOPがぶちあがる。イントロのピアノからテンションのゲージがおかしくなる

 

面白:95

 毎回のシナリオがとにかく練られている。どのセリフひとつとっても不自然なところはなく、全編にわたってサスペンスが持続する。脚本家のセンスだけでなく、映像との兼ね合いから考えて演出やコンテの力もあって初めて達成される水準だと思う。

 時系列と物語の順番を入れ替えるという構成も上手く嵌っていた。前半は特に「時系列の順で見てみたい」と思わせるよう目立たない程度にしっかりと前後の話数でリンクが見えていた。その分、後半3話くらいについては入れ替えの恩恵がほとんどなかったのは少し残念だったところ。1クールでクライマックスを作るならこの流れしかないとは思いつつ、あえて最終話にCase4あたりの話を持ってくるような構成も2クールだったらできたのかなと妄想してしまう。

 

恋と嘘

ストーリー:75

 世界観の根幹をなす「政府通知」や「赤い糸」といった設定について思った以上に踏み込まないまま終わったのはもどかしかったが、その分予想のつかない方向に二転三転していく話の推進力が魅力だった。結局キタエリ演じるキャラがどういう存在なのかとかよく分からずもやもやして終ってしまったが、ハーレムエンドへの持っていき方が良かったので締めは満点。 

キャラクター:80

 ブコメのかなめ、ダブルヒロインのどちらも魅力的な点が非常に優秀。「巨乳と貧乳(いうて普通くらいはあるが)」「黒髪と金髪」「大人しめvsぐいぐい来るタイプ」というお決まりの対比構造を基調としつつそれぞれに上手い味付けがされている。

 学内のアイドル的立ち位置で軽い幼馴染設定まである高崎さんは順当な仕上がりだが、それ以上にりりなちゃんがやたらかわいい。基本スペックがしっかり者なのになんかずれている感性と世間知らずさがキャラを魅力的にしつつ物語を転がしている。まちがいなくこのアニメ最大の魅力だった。

 主人公が無難。良くも悪くも普通といった感じで、特別なカッコよさもないが見ていて嫌いになるようなところもない。主人公を狙うもう一人のヒロイン、イケメンのホモはいい感じに動きの読めないキャラをしていた。

ビジュアル:75

 キャラデザは目が大きめでやや癖があるが、個人的には好きな絵柄。動きがすごいということもないが特に崩れるということもなく、エッチなカットではおっぱいとかがしっかり柔らかそうでシコい。物語に必要十分+α(エロ)な絵を提供しているように思う。

音楽:60

 ふつうちょい上。劇伴で盛り上げるような作品でもないので別にいいのだがOPもEDもそこまで盛り上がらないのはちょっと微妙。

 OPはボーカルの癖が強い。はまればよさそうだがはまらなかったのでいまいち。EDは結構好きだがなんだか昔の夕方アニメを思い出す。女性ボーカルでなんちゃってソウルっぽい曲やっているからか。

面白:70

 りりなちゃんの突拍子もない反応や主人公の謎の古墳推しなど、よくわからない部分も含めて細かいディテールが楽しかった。厚生省の役人を名乗るちびっ子巨乳お姉さん(cv黒沢ともよ)がセックスについて説明していたあたりが面白要素では最高潮。事前にコンドームを配っていたキャンペーンの謎も氷解した。

 

異世界食堂

ストーリー:85

 原作が連作短編の形式なので基本的にアニメも1話完結。毎回1つの料理にかかわる1人のエピソードが語られるというフォーマットを固定しつつ、語り口が多彩で飽きさせない。連作短編形式の良さをそのまま踏襲できていた。それに加え、続けて見ていくことで設定が徐々に開示されていき、異世界のことや猫屋のことなどがわかる構成もグッド。大きな起伏というのはないがどんどん世界観が深まっていく感じは没入しだすと止まらない。毎回設定を小出しにするあたり、連続してちょっとずつ見ていくアニメの良さを活かしていたと思う。

 惜しむらくは、やはり1話の切り口が少し視聴者を突き放す感じだったところ。お店の基本情報などでどうしても情報量が増えてしまうところにレギュラーキャラの登場までやってしまうのはちょっと盛り込みすぎだと思う。その辺も含めて85点。最終回が本当にいつも通りだったのも良かった。

キャラ:75

 毎回登場するのは店主と従業員アレッタ。それ以外は基本的にゲストキャラのことが多い。一部は常連として画面に映りこんでいたり他のキャラの紹介や絡みに使われていたりするが、設定が掘り下げられるのは基本的に担当回のみ。そのためキャラ押しできるほど強い魅力があるわけではない。

 しかし、どのキャラも「種族特有の要素」と「キャラクター個人のパーソナルな要素」の兼ね合いが上手くなされている。この2つの要素が料理をかけ橋に結びついてエピソードになるため話とキャラがセットで頭に残るようになっている。この辺はキャラクターというより話づくりの上手さが光っていた。

ビジュアル:85

 食べ物が本当においしそうだったので高得点。インフレ激しい飯作画業界だが、その中でも1級品といって差し支えないレベル。人間以外の種族のデザインもシンプルでわかりやすいものになっており、話の邪魔をしないよう出来ていた。背景の絵も終始細やかであり、画面内が非常に濃密だった。途中何回か無理やり動画を減らしてたカットもあったが、その辺も飯の作画で乗り切っていたと思う。 

音楽:85

 食堂のシーンで流れる音楽など、キャッチーでいいBGMが多い。空気づくりに一役買っていた。OPもEDもアニメの内容にリンクする良曲であり、アップチューンのOPにしっとり終わるEDというのもオーソドックスだが良い。

面白:90

 とにかく見ている時の没入感と見終わったときの満足感がよかった。強烈なエンターテイメント性とは無縁だが、昔読み聞かせをしてもらったときのようなどこか懐かしくもある満足感ともっと見たくなる物足りなさが感じられた。いまだに月曜の夜にテレビをつけたらやっているような気がしてならない。

 連作短編を1話完結の形式でやること自体は普通だが、アニメ化にあたり演出面で原作よりさらに多彩なアプローチを盛り込んでいるのが特徴的かつ効果絶大。見ている分には気づかないかもしれないが、原作と比較すると「地の文」を映像にするのに様々な技が使われていることがわかる。ビジュアルのイメージがしやすい原作の文章力も大きいが、これはやはりアニメスタッフの手腕をほめるべきところ。

 

天使の3P

ストーリー:75

 雑破業脚本ということで割と期待していたのだが、思ったほどにはキレが足りなかったというのが正直なところ。キャラクターの心情に寄り添ったストーリー運びなどは流石の上手さなのだが、設定やシチュエーションで遊べないからか記憶に残るような強烈さが足りなかった。後半にキャラが増えるにつれ話もグルーブしていったと感じるが、前半はやはりイマイチ。

 キレ味の部分をロリキャラの可愛さが担ってるということもあるので、見ていて退屈さはない。話としては過不足なくよくできている。

キャラ:90

 ロリ3人組の属性配分が完璧。銀髪、紫髪、金髪という色配分に弱めのツンデレ・おどおど・マイペースという性格配分、どれも奇をてらいすぎない程度の自然さでありオタク好みのでき。さらに委員長タイプの妹におっぱいのでかいツインテール不良風まじめっことヒロインの揃え方がえぐいくらい上手かった。ここに更に追加されたロリ巫女と日焼け娘も結構好きなのだが、声優の影響で別作品のこととか思い出してしまったので初期メンバーほどのめりこめなかった。でも日焼け跡はエロい

 主人公は元引きこもりだが別に嫌われるような要素もない人畜無害なキャラ。好きになることはあまりないがほかのヒロインを楽しむためには無味なくらいなキャラがちょうどいい。

ビジュアル:90

 ロリの可愛さが十二分に描かれていた。絵がきれいという以上に、カメラ視点の持っていき方などが秀逸。うなじ、膝小僧、ももうら。フェチあふれる場所をフォーカスしつつ、幼女の可愛さを見るうえで重要なポイントが上手く画面に収まるように調整されている。あえて顔を移さずにズームする場面なども素晴らしかった。

 途中で何話か作画が力づきそうなところもあったが、最終回にはきっちり決めてくれていたので終わりよければすべてよしというところ。

音楽:60

 OP、ED,劇中曲。どの曲もいまいちピンとこなかった。バンドがメインモチーフのアニメでこれはちょっとどうかと思うので相対的にダメなポイントになっている。 

面白:85

 可愛いロリキャラをこだわりぬいたアングルで写す。それだけでも十分楽しいところに上手いこと話が乗っかっているので楽しく見られた。余韻を味わうというより瞬間を楽しむ刹那的なものとして完成されていたと思う。

 雑破業の天才性について、構成脚本の上手さで語るのもいいのだが、今回最もその才覚が発揮されていたのは各話のサブタイだと思う。一見すると何の統一性もないサブタイトル。しかし実はすべてロックバンドのアルバム・シングルの邦題のパロディというこだわりぶり。更にアイキャッチもサブタイに合わせてCDジャケットをオマージュしてきているという事で、次回予告のひょうきん族ネタと合わせて「分かったやつだけが最高に楽しい」を貫いているところがめちゃくちゃロックだと思う。

 サブタイ元ネタなどについて詳しくはこのまとめで。

togetter.com

 

ゲーマーズ

ストーリー:90

 登場人物のすれちがい勘違いによって二転三転する状況。これが最高に楽しい。キャラの独白によって心情を説明しなきゃいけない部分が多いはずなのに、テンポが悪い感じがまったくしないというのも凄かった。ハイテンションなまくしたてセリフやボケつっこみの応酬は原作由来なのだろうが、台詞ヤシーンの運び方は脚本の上手さにあったと思う。ただストーリーを進ませるだけでなく、天道さんの一日を対比する回を入れたりすることでキャラの深め方も上手にしていた。構成担当の人はあまり名が知られてなかった若手だが今後注目していきたい。

キャラ:85

 どのキャラも癖が強く類型化の枠に収まらない。キャラコントで楽しむ感じではないが、思い込みの仕方に個性が出ていたと思う。後半でラブコメ色強くなったときも可愛さの演出がどのキャラも自然なのも良かった。 

ビジュアル:80

 線が太めな感じなのと元絵とのキャラデザの差、影の付け方などのせいで「作画が悪い」と言われがちだが、実際はかなりこっていた部類に思う。特に表情のつけ方、というか顔芸のたぐいは声優陣の演技に負けないくらいエッジが効いていた。影の付け方とかも細かいところで仕事が丁寧だったと思う。それでも一部ん?となるシーンは何度かあったのも事実なのだが。

音楽:75

 OPのキャッチ―さがよい。EDは普通。SEやBGMを使った笑いどころが上手く入っているのが好きだった。

面白:90

 ストーリーのスピード感がとにかく楽しかったのに加え、説明シーンでも遊び心や構図の面白さで飽きさせないようにできていたのがとても上手かったと思う。1話や6話でのよく分からない文字によるネタバレ演出だけはいまだによく分からないけど。*1原作の会話ボケだけに頼らないでアニメらしい笑いどころをたくさん含ませていこうという制作陣のやる気を感じた。

 

 

*1:そこで期待値が低かった分、2話以降で急上昇したと思う。